政治

103万円の壁は壁と言うから壁になる

12月11日に自民党・公明党と国民民主党の間でいわゆる103万円の壁を2025年から引き上げることを合意したと報じられています。
この103万円の壁は、所得が基本的な所得控除の合計額103万円以下の場合は所得税が課税されず、103万円を超えるとその超えた部分に所得税が課税され始めることを指しているようですが、かつては更に配偶者の配偶者控除の適用がなくなることにより世帯全体で見ると手取りが減ってしまうという意味で「壁」と言われていました。この点については昭和62年の改正で配偶者特別控除が導入されたことにより解消しています(下図)。

財務省主税局資料


このように所得が増えると手取りも増える状態であることが理解されていれば103万円をターゲットに就業調整をすることもないと考えられます(この状態で就業調整が起きるのであればあらゆる労働者が就業調整することになってしまいます)。従って、現状はかつてのイメージで漠然と就業調整をしている配偶者が多いと想像され、当局や専門家が正しい情報をしつこく発信することの重要性を再認識させるテーマです。

なお、子の所得が103万円を超えると親の特定扶養控除が適用できなくなる関係については対象外としています。

国会の質問通告が遅くなる理由

質問通告が遅くなるのは野党が日程闘争するしかなく、審議日程が決まるのが遅くなるような慣行によるところが大です。
少し前にNHKニュースで国会対応による官僚の長時間労働が採り上げられていましたが、質問通告が遅いことの原因はそもそも審議が行われるかどうかが前日夕方でも決まっていない場合が顕著です。
決まらない原因は日本の国会では議案の内容が修正されることはほとんどないため野党は日程闘争するしかないためとの説があり、それは国会審議に内閣が関与できないため国会提出前の与党での審査プロセスで必要な調整を完了してしまうからとの説明が下記の書籍で展開されています。
確かに逆のケースで私が勤務した頃のフランスでは政府が法案の審議日程を決めて、政府は呼ばずに議員間で逐条審議をしてかなりの数の修正が行われていました。そうなると日程闘争は不要ですしそもそもできません。
この辺りまで遡って検討しないと単に通告を早くしましょうと言っても実現しないと思われます。

日本の国会――審議する立法府へ (岩波新書)

小選挙区制に再考論

本来小選挙区制は政策による選択を可能にするものですが、日本の現状では不人気政策を排除する負の側面が深刻です。

7/24の日経新聞朝刊に小選挙区制を再考する超党派の動きがあるとの記事がありました。
かつての中選挙区制では同じ党から複数の候補が立つため政策の選択ではなく利益誘導合戦になる等の問題があるということで、政策を選択するクリーンな選挙にするために政治改革の目玉として小選挙区制(比例代表併用)が導入され、2009年には民主党への政権交代となりました。
もっとも、民主党政権の政権運営が上手くいかずに自公政権に戻った後は政権交代が期待できるような野党はなく、また、自公政権は様々な政策を取り込めるキャッチオールパーティー的要素もあることから、保守と革新の2大政党間の選択という構図にならず、単に不人気政策はどの政党も主張しないという小選挙区制の悪い面が出てしまっています。小選挙区制の場合トップの候補以外は落選のため少しの風向きの変化でも議席を失います。中選挙区制であれば多少不人気な政策を主張してもある程度の支持基盤があれば二番手以降で議席は守れたことも少なくないと思います。
選挙制度の見直しはそれにより議席を失いかねない議員の抵抗もあるはずでなかなか難しいと思われますが、超党派での検討に期待します。
2024年7月24日(水)日本経済新聞朝刊