日本においても子育てと仕事の両立支援の施策等が充実してきていますが、真に両立して出生率の上昇に繋がっているとは言えない状態です。
元々厳密な意味での「両立」は困難で、基本的には仕事をしている間は子育ては保育所等に託す、すなわち子育てには従事しないことによる「両立」なのですが、仕事で完璧を求められる場合には仕事の終了がかなり遅くなってしまう保育所等が対応可能な時間を超えてしまうこともあり得ます。そうすると仕事を完璧にしたいと思う人は子供は持たないという選択をする可能性が高くなります。また、子育てに完璧を期すことになると、例えば母乳に拘る場合そもそも預けること自体を是としないこともあり得ます。
逆の例としてはフランスが挙げられます。周知のようにマネジメント層以外の一般労働者には完璧な仕事は求められていません。また、子育てについても早期の自立という美名のもと最小限のケアで済ませているように見えます。双方の緩さによって「両立」が可能になっていると考えられます。
少子化対策
政策論議を真剣にすると逆効果になるケース
政策を検討する際にはまず課題を分析しますが、課題分析に真剣に取り組めば政策の対象となるグループにおいて課題ばかりが認識されて望ましいアクションが寧ろ行われなくなる方向に働くリスクがあります。
顕著な例としては少子化対策があり、2023年12月22日の「こども未来戦略」においては、課題として下記の3点を挙げています。
(1)若い世代が結婚・子育ての将来展望を描けない
(2)子育てしづらい社会環境や子育てと両立しにくい職場環境がある
(3)子育ての経済的・精神的・精神的負担感や子育て世帯の不公平感が存在する
それぞれ詳細な説明があり、これを読むだけで子供を持つのを躊躇してしまう効果がありそうです。
他方でそれぞれの課題を解決するのに十分過ぎるような施策が実現することはなかなかありません。大抵は部分的な対応になります。
この問題について直ちに有効な解決策は思いつかないのですが、直ちに実行可能なものとしては、子供を持つことのメリットや持たない場合のデメリットも併せて分析・説明して、課題対施策のみならずトータルで判断ができるようにすることはあり得ます。